(質問)日本原燃のモニタリング計画について教えてください


 再処理施設周辺で受ける放射線量は、自然界から受ける放射線量の約100分の1であり、また、自然放射線の地域差などと比較しても非常に小さな値です。
 当社における環境放射線等モニタリングは、原子力安全委員会が策定した「環境放射線モニタリングに関する指針」を踏まえ、青森県が策定した「原子燃料サイクル施設に係る環境放射線等モニタリング基本計画」および原子力安全委員会が策定した「六ヶ所再処理施設周辺の環境放射線モニタリング計画について」に基づき実施しています。
 「環境放射線モニタリングに関する指針」では、「モニタリングの基本目標は、原子力施設の周辺住民等の健康と安全を守るため、環境における原子力施設に起因する放射性物質又は放射線による周辺住民等の線量が、年線量限度を十分に下回っていることを確認することにある。」とされており、平常時のモニタリングにおいては、
  (1)周辺住民等の線量を推定、評価すること。
  (2)環境における放射性物質の蓄積状況を把握すること。
が重要とされています。
 この目的を達成するため、六ヶ所再処理施設周辺における、食品摂取状況,施設周辺の土地利用状況,農畜水産物の生産高,流通状況等を考慮して、現状の環境放射線等モニタリング計画が策定されており、現状の環境放射線等モニタリングで十分であると考えております。
 環境放射線等モニタリングは、国により動植物の生息環境や食習慣が異なるのでそれにあった計画になると考えます。

Q1.
 日本原燃のモニタリング計画に陸生苔も(松葉と野菜だけでなく)含むべきであると考えるが、行われているのか?
 また、行われていないのなら、行うべきと考えるが、いかがか?

(回答)

 陸生苔はモニタリング計画になく実施していません。
 現行環境モニタリング計画は、「環境放射線モニタリングに関する指針」を踏まえ、食品摂取状況,施設周辺の土地利用状況,農畜水産物の生産高,流通状況等を考慮して、対象試料を選定しています。また、環境の変動を把握する観点から、放射性物質の生体濃縮の速度や度合いが大きく、かつ、施設周辺で容易に採取できる松葉を指標生物としています。以上のことから陸生苔をモニタリング計画に追加する必要はないと考えます。


Q2.
 モニタリング計画に淡水植物(淡水動物と河底土だけでなく)は含むべきであると考えるが、行われているか?   
  また行われていないのなら、行うべきと考えるが、いかがか?

(回答)

 現行環境モニタリング計画は、「環境放射線モニタリングに関する指針」を踏まえ、食品摂取状況,施設周辺の土地利用状況,農畜水産物の生産高,流通状況等を考慮して対象試料を選定しています。
 当社の再処理施設では放射性処理済廃液は河川への放出はなく、直接海洋へ放出しており、また定常モニタリングが可能な淡水植物は存在しません。
 以上のことから淡水植物をモニタリング計画に追加する必要はないと考えます。

 

Q3.
 炭素14の測定は米試料のみでしかおこなわれていないのか?炭素14のモニタリングは松葉、牛乳といった他の陸生試料、そして海洋試料へも広げるべきであるが、行われていないのか?炭素14の濃度は周辺環境(地域的及び地方的範囲)による風向きなどに影響される。試料の数と採取地点は、こうした変動を地図化せきるように選定すべきであるが、そうされているか?いないとしたら、そうされるべきと考えるがいかがか?

(回答)

 炭素14の測定は、現在、米(精米)試料のみです。
 現行環境モニタリング計画は、「環境放射線モニタリングに関する指針」を踏まえ、食品摂取状況,施設周辺の土地利用状況,農畜水産物の生産高,流通状況等を考慮して対象試料を選定しています。日本人の食生活から主食としての米(精米)は摂取量及び単位重量当たりの炭素含有量が多い食料であり、栽培期間も長いためモニタリング試料として選定しています。
  米試料の採取地点は風向きの他、施設周辺の土地利用状況、農産物の生産高、流通状況を考慮して、施設を囲むよう6地点で、また比較対照として青森市でも採取しています。
 なお、野菜(葉菜,根菜・イモ類)中の炭素14の測定は、再処理設備本体の使用済み燃料による総合試験の開始年度から行う予定になっています。
 また、当社の再処理施設の廃液の処理は、ラ・アーグ再処理工場(COGEMA社)と異なっており、排液中に含まれる炭素14は微量であると想定しています。仮に、大気中の炭酸ガスが海水に溶け込んだとしても、海洋中には多量の炭素がありバックグランドレベルに影響を与えることはないものと考えています。

 

Q4.
 トリチウム濃度は日本原燃では、大気,雨,淡水,海水,海水魚類で測定されている。
  しかし、組織自由水中のトリチウムだけであるようだが、その理解でよいか。有機結合型トリチウム(OBT)も測定すべきであると考える(なぜならOBTは組織自由水中のトリチウムより毒性が強いから)がなされていないのか?されていないなら、されるべきと考えるがいかがか?
  モニタリング計画は牛乳も測定項目に含むべきであるが、含まれていないという理解でよいか?含まれていないなら、含むべきと考えるがいかがか?

(回答)

 当社のトリチウムに係るモニタリングは大気,雨,淡水(河川水,湖沼水,水道水,井戸水)、海水中のトリチウム及び魚類の組織自由水中トリチウムを対象としており、魚類のOBTは測定していません。また、牛乳中のトリチウムについてもモニタリング計画になく実施していません。
 魚類の組織自由水中トリチウムは海水中トリチウムの変動をよく反映するといわれており、有機結合型トリチウムは濃縮されない(環境試料中のOBT/TFWTは1を超えない)ことから、また分析の容易性も考慮して定常のモニタリング項目として組織自由水中トリチウムを対象としています。
 また、農畜産物中のトリチウムは施設から放出された大気中のトリチウムに起因していることから、定常のモニタリング項目として大気中のトリチウムを対象としています。

 

Q5.
 ヨウ素129の測定は表層土のみでおこなわれるようであるが、その理解でよいか。野菜、牛乳、海藻類でも測定が行われるべきであると考えるが、いかがか。

(回答)

 現状、ヨウ素129の測定は表層土のみです。
 ヨウ素の作物中への取り込みは葉面(気孔を含む)と根からの吸収であるが、ヨウ素129は半減期が非常に長いため土壌からの移行が重要となります。しかし、土壌から野菜等への移行係数が0.02程度と小さいことから、定常的なモニタリングとして表層土中のヨウ素129をまずモニタリングすればよいと考えます。また、海藻中ヨウ素129については、当社の再処理施設から海洋へ放出される放射性ヨウ素の推定年間放出量がラ・アーグ再処理工場(COGEMA社)の放射性ヨウ素の海洋放出量の基準値と比較して10分の1以下と少ないことから、定常モニタリングにおける分析・測定法においては定量下限値未満になると想定しており、モニタリング対象とするには至らないものと考えます。

 

Q6.
 ウラン濃度は海洋試料では測定されないようであるが、その理解でよいか?測定すべきであると考えるが、いかがか?

(回答)

 当社の再処理施設から海洋へ放出されるウランの放射能量はプルトニウムやアメリシウムに比べ少ないことから測定対象としていません。なお、ウランは天然放射性物質として海水中に3.3μg/l(約0.04Bq/l)* 程度存在しています。
    *:出典「日本環境図譜(共立出版(株))」

 

Q7.
 大気中の放射性ガスの濃度は検出限界が高くなければ測定されない(ベータ線放出核種のクリプトン85の場合、約2000Bq/m3)ようであるが、その理解でよいか?クリプトン85のバックグランドレベルは2Bq/m3以下であり、したがって日本原燃のモニタリングシステムでは敷地外の大気中におけるクリプトン85の濃度は900倍上昇しないと検出されないだろう。クリプトン85の濃度が検出できるようなシステムにすべきであると考えるがいかがか?

(回答)

 法令によるクリプトン85の周辺監視区域外の空気中濃度限度は1×10-1 Bq/cm3(100,000Bq/m3に相当;この値が1年間継続した場合に公衆の被ばく線量が1mSvに相当する)ですが、当社の放射性ガスモニタはその濃度の50分の1のレベルを常時連続監視できる性能を有しており、再処理施設周辺の公衆の被ばくを監視する上では十分なものと考えます。

 

Q8.
 日本原燃が上記の期間(2001年4月から2002年3月)に測定した土試料中、ウラン238の濃度が最高値を示した試料採取地点はどこか。

(回答)

 当社において、表土試料は2地点(尾駮,千樽)で採取測定しており、全ウランの測定結果はバックグランドレベルでした。

 

Q9.
 同じく、川底土中のセシウム137濃度は、乾燥単位重量当たり検出限界~12Bq/kgで、湖底土中は乾燥単位重量当たり5~55Bq/kgの範囲である。これらの試料の正確な採取地点はどこか。

(回答)

 河底土の採取場所は、老部川と二又川であり、湖底土の採取場所は、尾駮沼と鷹架沼及び小川原湖です。これらのセシウム137は全国的に観測されるが、1960年代に実施された大気圏核実験による降下物の影響が残っているものです。

 

Q10.
 ラ・アーグ再処理工場では、およそ99%の放射性ヨウ素が海中に、 1%が大気中に放出される(これは陸上の食物連鎖が汚染されるのを低減するためである)。当社の再処理工場放出管理目標値によれば、放射性ヨウ素は海洋へ80%、大気へ20%放出されるようである。この違いの理由を説明されたい。また、放出計画の詳細を知りたい。

(回答)

 ヨウ素は気体状にしてヨウ素フィルタにて吸着除去することが放出の低減化に効果的であるため、溶液中から気相への追い出しを行い気体廃棄物処理系のヨウ素フィルタにて吸着除去します。ヨウ素フィルタで除去できないわずかのヨウ素は大気中へ放出しますが、放出に際しては、十分な拡散・希釈能力を有する排気筒から放出することにより、一般公衆の線量の低減を図ります。また、廃液中にわずかに残ったヨウ素に対しては、十分な拡散・希釈能力を持つ放出管の海洋放出口から放出することにより、一般公衆の線量の低減を図ります。大気、海洋への放出に際しては、年間の放出管理目標値を定め、それを遵守するように管理します。

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