(質問)ある書籍に「フル操業時に六ヶ所村の再処理工場が臨界爆発すれば、被害は地球の半分の生命が消えるほど巨大である」と書かれていましたが、実際はどうなのでしょうか?

(回答)

 再処理工場の臨界防止対策としては、

  (1) 容器の中に入れるウランやプルトニウムの量を、臨界に必要な最小値よりも小さい値になるように制限する質量管理
  (2) 容器の形状と大きさを制限することにより、中性子の反応を抑えて臨界にならないようにする形状寸法管理
  (3) ウランやプルトニウムの濃度を一定の値以下に制限する濃度管理

などにより臨界の発生を防止しています。
 その上で、例えば溶液に含まれるウランやプルトニウムの濃度が異常に上昇した場合、運転を自動的に停止するなどの拡大防止策や、万一臨界が発生しても、おおよそ1メートル以上ある厚いコンクリートの壁で放射線を遮り、一般公衆、作業員の被ばくを最小限に抑えるなどの影響緩和策を講じるといった多重防護の考え方に基づいた安全設計を行っています。
 このような防止対策を講じているため、臨界が発生することは考えられませんが、安全設計の妥当性を確認するために、溶解設備の溶解槽における臨界を想定し、評価しています。
 溶解槽において、仮に臨界が発生したとして、大気中へ放出された放射性物質による影響を、実際の気象データをもとに、各方位(16方位)毎に評価した結果、敷地境界の外で影響が最も大きくなる値として0.59ミリシーベルト(※)とその線量を評価しています。
 再処理工場では、原子力発電所で燃やされて核燃料物質が少なくなった使用済燃料が処理され、しかも臨界を防止する形状の溶解槽で、少量ずつ溶解していますので、環境に影響を与えるような事故にはなりません。
 また、火災・爆発対策についても、

  有機溶媒の引火点より低い温度で運転するとともに、接地等により着火源を排除する発生防止
  万一温度が引火点に近づいた場合、加熱を自動的に停止する拡大防止
  火災検知器を設置するとともに、施設や場所に応じて適切な消火設備を設置し、延焼防止のために耐火壁を設ける影響緩和

などにより、発生・拡大の防止等を図っています。
 なお、防災上の扱いでは、再処理工場は、核分裂連鎖反応を制御しながら運転している原子力発電所と違い、使用済燃料を切って、溶かして、化学的に分離する工場であり、核分裂反応を起こさせる工場ではないため、原子力安全委員会が平成6年に公表している「再処理施設周辺の防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲について」では、原子力発電所が8~10kmとなっているのに対し、再処理工場は、工場を中心として半径5km程度となっております。

 ※0.59ミリシーベルト・・・胃のX線検査で受ける線量と同等の値です。
日常生活と放射線